週刊ポスト2019年3月29日号
「相続の手続は『いつやるか』がすべて 生前贈与は『死ぬ3年前』までに 遺言書は『死後3ヶ月以内』に確認」

新聞に広告が掲載されている週刊誌ですが,新聞広告も含めると,タイトルが若干ミスリーディングで注意が必要です。

新聞広告も含めると,遺言書を,遺言者の死後3ヶ月以内に確認(検認)しなければ無効になるかのように誤解を与えかねません。

記事のうち遺言書の検認に関する部分は53頁前半ですが,タイトルに反し,記事本文の内容としては,自筆証書遺言は家庭裁判所で検認の必要があることと,相続放棄は相続開始を知った時から3ヶ月以内に申述する必要があるということを組み合わせているだけです。

公正証書遺言については検認の手続はないため,3ヶ月と言わず相続開始後直ちに確認すべきです。他方,自筆証書遺言については,検認を申し立てない場合,過料の制裁があることは知られておくべき法律知識です。

この記事は,結局,「遺言書を相続放棄期間内に検認しなければ仮に相続放棄が必要になった時に困難になる」ということを言いたいのだと思われますが,遺言書が残されている被相続人について相続放棄の要否を検討すべきケースは実務上まれでは無いでしょうか。遺言書を残す被相続人が実は負債の方が多いということはあまり聞きませんし,逆に,相続放棄の要否が検討されるケースは,債務整理案件と重複することが多く,積極財産がほとんど見られない場合が多いと思われます。また,負債の負担者について遺言をしたとしても,遺言のとおりに承継されるとは限りませんので,遺言相談を受ける際には負債の額についても確認し,生前に積極財産で消せる方法があるならそれを検討することがベターです。

記事中で,債務が多いと見込まれる場合に限定承認の方法を紹介していますが(53ページ2段目。おそらく記者によるコメント),相続税務を実際に取り扱っている税理士の方が漫然と限定承認を勧めることはまずありません。限定承認の実務上の問題点はいくつかありますが,「譲渡所得税」との関係で極めて不利,ということをここでは述べるに留めます。

なお,生前贈与を死ぬ3年前に済ませておくという記述もあり,この記事の見出しはこの部分をクローズアップしたものだと思われますが,その記述のソースである税理士の方のコメントにもあるとおり,人の亡くなる時期をそんなに都合良くコントロールできるものではないでしょう。生前贈与を用いた相続税務の方法は,現在では,よく考えられたさまざまな方法があり,「人はいつ亡くなるか分からない」ことを大前提とすれば,始めるのであれば早いに越したことがないということに尽きます。

また,相続にまつわる手続をどの専門家に頼むかという一覧表も掲載されていますが(52頁),相続調査は司法書士に限らず弁護士も当然行います。最初に問い合わせる専門家は,紛争の可能性がある場合は弁護士,税務が中心となり得る場合には税理士が適当でしょう。

この記事の,遺言作成時に相続人と意向のすりあわせをするといった指摘は有益ですが,以上指摘したようになかなかトラップも多く,読んでいてヒヤヒヤします。


作成者 弁護士小川中
2019年3月29日